【2002年9月20日の日記】しなやかに、たゆたうように

※ご注意※こちらは、夫と13年前に付き合い始めてから6年を経て結婚するまでの「バツイチ男と結婚するまでの話」というシリーズものであり、本エントリは2002年9月20日当時のWeb日記の内容をそのまま掲載しています。詳しくは以下の一覧をどうぞ。


バツイチ男と結婚するまでの話 カテゴリーの記事一覧 - 街場のワーキングマザー日記

 

以前行ったボサノヴァのイベントで初めて知った、吉田慶子さん。昨日、コルコバード@高田馬場に彼女のライブを聴きに行きました。 相変わらずの癒しオーラ。彼女がそこにいるだけで、その場がほんわかと柔らか~い雰囲気に包まれてしまいます。そして、心の奥深くに沁み渡るような、優しく切ない、それでいて凛とした歌声…。

 

実は、入院以来、すごく気持ちがぐちゃぐちゃしてたんです。

手術を受けた直後、病室のベッドで、カレのことで初めて母親に小言を言われて。

「35歳にもなって無職でダラダラして結婚してくれるかどうかもわからない男なのに、毎週末ずっと泊まりに行って…相手もあんたも何を考えてるの? あんたは自分で思ってるよりずっと心が弱いんだから(そんなこと、私が一番わかってるわよ)、結婚できなくて別れて、また辛い思いするわよ。今回も泊まってたから、こんな家から遠い病院に入院することになって…泊まりに行く回数を減らしなさい。お父さんもお姉ちゃんも、正直言って怒ってるわよ」

親が心配するのはもっともだと思います。私が結婚したいってこともよく知ってるし。実家に住まわせてもらってるんだから、娘のことに口を出したくなるのもわかります。でもね…もう28よ? いい加減に子離れしてよ。 

 

カレへの思いと、結婚に対する強い願望。その板挟みで苦しい思いをしていたところに親から追い討ちをかけられて、入院中は精神的にかなり参っていました。退院してからもそのことで口論になり、「今はカレが好きだし、カレのそばにいたいの。でも、私は生活の目途もつかない男と結婚するほどバカじゃないし、カレもそんな気はない。結婚したいと思う男性が現れれば別だけど、今はカレが好きなんだもの、仕方ないでしょう?」と親をなんとか説得しました。それ以来とりあえず何も言ってはこないけど、それは表面だけのこと。いつ再び火がつくかわかりません。

 

カレは、まずは翻訳家になることを前提に動いています。最近、出版社を経営しているお兄さんの仕事を手伝うことになりました。とりあえず単発で取材旅行に付き合い、翻訳作業をするだけですが。社員として働いてもいいぞ、というお誘いも受けているようで、こちらは考え中。一日も早く翻訳家になるためには、仕事ばかりではなく、勉強できる時間も確保しなければいけません。でも…そうなると、カレ自身がなんとか食べていける程度の収入にしかなりません。

「5年後ぐらいまでには、翻訳家になって、なんとかきちんと食っていけるようになるといいんだけどなあ」というのが、最近カレが打ち出した目標です。結婚なんて、前提の“ぜ”の字にもしてない。結婚したいのなら、今のうちに別れるべきなのか…でも…そんなうまくはいきません。

カレが私を愛してくれているのは間違いないし、日に日に互いの愛情が深まっているのを感じます。でも、カレは「おまえに『結婚したいからあなたとは別れる』と言われたら、俺に止める権利はない」と思っているようです。それはカレなりの優しさであり愛情ではあるけれど…。 自分の気持ち、カレの気持ち、それに加えて親の気持ち…がんじがらめ。

 

…でもね、昨日、彼女の歌声に耳を傾けているあいだは、そんなことすっかりどうでもよくなっていたんです。

彼女の歌声から伝わってきたもの…それは、シンプルに、ただ生きること、ただ愛すること。 ボサノヴァは明るく楽しいもののように思われがちですが、その歌詞の多くは深く激しい愛情や絶望を表しています。人の心は、惑いや憂いに振り回され、自分が本当は何をしたいのかもわからなくなってしまうことが往々にしてあります。でも、そうした憂いや惑いが渦巻く台風の中心には、何の修飾語もつかない「生きる」ということ、「愛する」ということが核心にあります。ボサノヴァの単調で静かな調べが、その「核心」を思い起こさせます。彼女の歌声には、その「核心」がしっかりとありました。余分なものをそぎとった後に残る、芯がありました。

 

…状況が複雑なのは仕方がない。いつ、どんなことがあっても、自分の中の「生きる」ことへの前向きな気持ち、「愛する」心だけは、大切にしていかなくちゃ…ううん、むしろ、大切なのはそれだけなんだよね。心の核心だけは疲弊せずに、いつも瑞々しくありたい…そんな気持ちでいっぱいになりました。そうは言っても、現実は厳しいけれど…(泣)

黒いシンプルなシャツにジーンズ、黒いパンプス、シルバーのチョーカーだけを身につけ、ギター片手に静かに歌う吉田慶子さん。そのシンプルさは、彼女が、人生で一番大切なことは何なのか、きちんと知っている女性であることを、雄弁に物語っています。ほんとうにステキです。あんなふうにシンプルでしなやかな、風になびく葦みたいな女性になりたいなあ…。

 

う~、あたしとは正反対かも。あたし、どっちかと言うと向かい風に逆らってヘトヘトになるタイプだからな…う~ん…。  

まあいいや、もっと人生楽しもうっ! うん!

 

四十路マチ子のコメント:

これが、入院中に起きていたことでした。苦悩するアラサーマチ子です。

 

吉田慶子さん、懐かしい。出産後は動向を追っていませんでしたが、今でもご活躍されているご様子。HPはこちらです。

歌声はこちらをどうぞ。またライブに行こうかな。


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