4月の保育士は、就任したての米国大統領だと思え。

今日から新年度ですね。

乳幼児のいるワーママにとっては、子供の転園や進級が気がかりです。

この時期になると、私はすこーしだけ憂鬱な気分になります。

「あーー、また保育士の悪口大会が始まるのかな」と。

 

4月の保育園は修羅場

息子を通わせている園では、保育園にしては保護者同士の交流が盛んです。園にまつわる情報、ほかの子供達の様子、近所のお店や病院の情報などを共有できるので、このような交流にはメリットが多いのですが、この時期は特に、保育士への不安を吐露する愚痴で溢れます。

 転園・進級するのは子供たちだけではありません。先生たちも、転園したり、違うクラスの担当になったりで、不慣れなことばかり。特に、息子の園は公立のためか、転入してくる先生方は3月中に前もって引継ぎを済ませておくことはなく、4月1日に初めて新しい環境に放り込まれるようです。(このシステムはどうにかならないかと思いますが…)

新しい環境を恐れてギャン泣きする子供達の相手をしながら、まだ誰が誰かもよくわからない状態で、自分も不慣れな職場で仕事をする。これは、本当に大変なことだと思います。

また、子供たちは、教室がひとつ隣りに移った、お友達がひとりいなくなった…といった些細なことにも敏感に反応し、いつになく大人しくなったり、乱暴になったりするので、前年から引き続き同じクラスを担当する先生にとってさえ、新年度は緊張の連続でしょう。

 

このような状況では、子供のケガを見過ごしてしまったり、子供同士のケンカに気づかず事が大きくなったりと、ちょっとしたミスやトラブルがよく起こります。また、先生方もお迎え時は緊張の糸が切れかけているので、親への対応や説明が不十分になることもあります。

すると、親、特に母親たちは不安を覚え、帰りがけの駐輪場やSNS上で、保育士への愚痴が広まります。「ケガしてたのに謝らなかった」「あの先生は若いから不安だ」「前の先生の方がよかった」など、など。

でも、このようなネガティブな話は、6月くらいになればパッタリと止むのです。子供たちも先生方も、GWが明けて落ち着いてくるのですよね。子供が年少や年中ともなれば、4月の些細なトラブルは慣れないための一時的な問題だとわかっているのに、なぜ毎年同じように騒ぐのだろう、といつも不思議に思います。

 もちろん、先生のミスはミスですし、親も不安なものは不安です。何か気になることがあれば、連絡帳に書くなり直接話すなりして、コミュニケーションを取ればいいと思います。でも、その不安をいたずらに不特定の保護者に拡散する必要はないでしょう。ネガティブな発言は、これといって不安を感じていなかった保護者にも伝染し、いらぬ不信感を生むからです。

 

米国大統領とマスコミの蜜月関係

こうした新年度の保育士への不満を耳にする度に、私はアメリカの大統領就任後の100日間、すなわちネムーン期間を思い出します。

ネムーン期間(ハネムーンきかん)とは、政治において、政権交代後の新政権の最初の100日間のことを指す。発足直後の新政権は一般的に高い支持率を示す傾向があり、新政権の最初の100日と国民・マスメディアの関係を新婚期(蜜月)の夫婦になぞらえて名付けられた。アメリカ合衆国では報道機関のみならず野党も、この100日間は新政権に対する批判や性急な評価を避ける紳士協定がある。100日ルールとも呼ばれる。(出典:ハネムーン期間 (報道) - Wikipedia

慣れないうちは誰でも失敗をする。だから、しばらくの間は評価を保留し静観する。言論の自由を標榜する国の、素晴らしき知恵だと思います。私たち保護者も、子供を預ける先生方に対して、これと同じ知恵を発揮できないものでしょうか。

 

なぜ、アメリカの報道機関は新政権の批判を控えるのか。それは、「自分たちが選んだ大統領を、まずは全面的に信任します」という意思表明でしょう。人と人との関係は、まずは相手を信頼することから始めるのが道理だと、私は思います。不信は不信を増殖するだけです。

そして、信頼するからには待つことが不可欠です。私たちは、子育てを通して、そのことをよく知っています。子供は(大人も)一晩では変わりません。何度言っても出来なかったことが、3か月、半年、1年後に、気がつけば出来るようになっている。その間、親はついつい焦って叱りつけたりしがちですが、それよりも「大丈夫、いつかきっとできるようになるよ。お母さんはいつもあなたを信頼しているからね」というメッセージを送り続けることの方が、子供にとってよほど励みになることはわかっている。大人同士の関係も、これと同じことではないでしょうか。

まして、保育士は、自分の子供を共に育てるパートナーです。「子供をお預けするからには、私はあなたを信頼し続けます」と、こちらから心を開くこと。そして、最初のうちに多少のミスがあったとしても、「これから気をつけていただければ大丈夫です。これからも宜しくお願いします」と信頼のメッセージを送り続けること。それが、保育士と共に子育てをしていくうえで大切なことだと思います。自分を守り育ててくれる大人同士の関係の良し悪しは、夫婦のそれと同様に、子供にも大きな影響を与えるはずです。

 

4月は保育士とのハネムーン期間

4月の保育士は、就任したての大統領と同じように、まずは信じて子供を任せましょう。問題のある保育士も中にはいるでしょうが、大半の方は、とても真摯に我が子と向き合ってくれています。特に、初めて子供を保育園に預ける方は最初は不安だらけだと思いますが、心を開けば、先生方はきっとその不安を受け止めて共有して下さるでしょう。苦情を申し立てるのは、余程のことがない限り、まずは様子を見てから、5月下旬を過ぎたあたりでも遅くはないはずです。

 そして、4月の修羅場であたふたと働く保育士さんたちへ。皆さんのおかげで、私たちは安心して働くことができます。これから1年間、どうぞよろしくお願いします。