元ひきこもり女子大生による、ピンポイント就活のススメ

ひきこもり女子大生だった

プロフィール欄に書いてありますが、大学時代、私は今で言うひきこもりでした。

大学に入学した直後から徐々にひきこもり始め、後期から半年休学。復学後もひきこもりがちなのは変わらず、ボロボロの成績とギリギリの単位数で、なんとか5年で卒業しました。

このように就活には不利な条件ばかりでしたが、就職はできました。以来16年、同業他社への吸収合併や転職を経つつも、基本的にはずっと同じ仕事を続けています。

当時はいまと同じく就職氷河期ひきこもりの落第生でも、なぜ就職できたのか? その秘訣は、あらゆるポイントを絞ったことにあります。

 

これから書くことは、16年前の一人の落第生の実例でしかなく、ある意味では極論です。就活の一般的セオリーとはかけ離れた部分が多々あります。でもきっと、ある種の就活生にとっては、何かの参考になり得ると思います。

 

絞るポイント①:自分のウリを絞る。

落ちこぼれ就活生は、まずは悪条件をサラリと認め、自分のウリを絞りましょう

私の母校は真面目な優等生ばかりの女子大で、必修科目を落とす学生は滅多にいませんでした。落第したことに開き直れなかった私は、復学後も恥ずかしさと鬱傾向で授業に出られず、出席率はいつもギリギリ、サークルにも入りませんでした。

学生としての活動がこのように壊滅的だったので、何かウリにできることをつくる必要があると、就活開始の1年ほど前から考えていました。そこで選んだのが、月並みですがTOEICで高得点を取ることです。

もともと英語は得意でした。周期的に襲ってくる鬱傾向と自意識過剰のために大学には足を運べなかったものの、復学して1年ほど経った頃は鬱状態からだいぶ回復していたので、英文タイプの課外講座を受けたり、スピーチに特化した英会話学校にも休み休み通っていました。TOEICはコツを掴めばスコアを伸ばしやすいので、2、3か月勉強して最初の受験で825、その次には850が取れました。

当時は今ほどTOEICが普及していなかったので、850といえば、英文卒でも「すごいね!」と感心されるレベル。これでやっと、「腐っても〇大英文科卒」の英語力をアピールできるようになりました。

 

絞るポイント②:希望するワークスタイルを絞る。

次に、どのような働き方をしたいのかを考えます。もっとも、落ちこぼれ学生で英語力しかないのだから、おのずと以下のように絞られていきました。

総合職で働く自信もバイタリティもない⇒専門職 or 一般職。

文化系で体力がなく、営業には向いてない。但し、コツコツと作業するのは得意⇒デスクワーク。

と、いうわけで、ここまでの段階で、英語力を生かせる、デスクワークの専門職or一般職に絞られてきました。

 

絞るポイント③:エントリー企業を絞る。

自分のウリとワークスタイルを絞ったら、その両方に該当する業種・職種に的を絞ってエントリーしましょう。

ちなみに、私がエントリーしたのは以下の4社だけでした。エントリーした順に並べます。

1. 超大手メーカーのテクニカルライティング職(TOEIC830以上が必須)

2. 大手英会話学校

3. ある業界の大手事務所A

4. ある業界の大手事務所B

 

1.と2.は、どちらかといえば記念受験みたいなものです。英語力を要する業種の大手企業に応募して、実際のところ、どこまで通用するのかを図るつもりでした。

1.のテクニカルライター職は、履歴書を送っただけで終わりました。英語力を要する専門職としては最難関の部類なので、当然ですね。

2.の英会話学校は、履歴書が通って2次面接まで呼ばれたのですが、その前に3.の内定を受けたので、2回目の面接を断りました。私にとっては、ひきこもりの落第生でも面接させてもらえるんだ!と、これだけでも自己評価の回復に繋がりました。

 

そして3.と4.は、私がメインターゲットにした「ある業界」でした。

この業界では、ある国家資格を持ち、時に「センセイ」と呼ばれる人たちが寄せ集まって事務所を運営しているのですが、その中でも特に大手の事務所は日常的に英語を使用しているので、「英語ができる秘書」を沢山採用しているのです。

このような特殊な秘書業があることを知ったのは、大学の就職課で似たような事務所の募集ビラが沢山貼ってあるのを見たときでした。(当時はインターネットが普及していなかったので、企業HPなんて一握り。ネットでの採用も、就職課のデータベースで検索する方法もなかったのですよ…うわ~昔だわ~)

そして、この募集ビラ群を眺め渡して、「よーーし、コレだ!!」と確信したのです。英語力を生かせて専門性のあるデスクワーク。まさに私にピッタリでしょ!!と。

 

ちなみに、少し視点は違いますが、こちらの記事も「自分に合った職場を選ぶ」という点で深く共感しました。

(ニュースの扉)津村記久子さんと探る就活 世界への入り口、知名度より社風:朝日新聞デジタル

作家の津村記久子さんが合同就職説明会に潜入して就活を疑似体験しているのですが、着目点がユニークです。

注目したのは、派手な看板のない、ガスの関連機器を売る会社だ。きっかけは開場から間もないお昼どき、ほかの企業が学生の呼び込みを急ぐ中、ブースが無人だったこと。「只今(ただいま)食事中」と書かれた紙が一枚、おかれていた。

戻ってきたベテラン社員は「良くも悪くも『ゆるい』会社。一度入ったら他の会社は行けません」。入社2年目の社員も「学生時代の友人の入った会社と比べても一、二の居心地の良さだと思います」と言う。

2人を観察し、「私が就活生なら、この企業を受けてみる」と津村さん。「給料は高くないかもしれない。みんなにとって優良な企業でなくても、私には合う」

津村さんが何よりも重視したのは、居心地のいい 「社風」。どのような視点であれ、自分だけの選択基準は何かということを、まずはじっくり考えましょう。

 私自身も、社風はとても重視していました。就職課に残されているOGの現況アンケートから、社風の合いそうな3.と4.を選び、3.の大手事務所Aで2次面接まで進みました。

 

あとは捨て身の覚悟で

2.の英会話学校の面接でもそうでしたが、基本的に、私はひきこもりであったことを下手に隠そうとはしませんでした。

大学の就職課では、余計なことは話さない方がいいと助言を受けたのですが、それでは休学や成績不振などの説明がつかず、どこかでボロが出ると思ったのです。

当時はまだ「ひきこもり」という言葉はなかったので、不登校になって半年休学したこと、復学後も最初の1、2年は情緒不安定で、大学のカウンセリングルームに通い続けていたことなどを正直に話しました。

そのかわり、カウンセリングを受け続けて不登校に至った複雑な家庭事情などを徹底的に顧み、トラウマをきっちり克服したこと。失った自信を取り戻すためにバイトもして一生懸命働いたこと。成績不振を補うために、独自に英語の勉強を続けて結果を出したこと。これらの一つ一つを、正直に、丁寧に、誠意をもって話し、「こんな私ですが採用してください」と頭を下げました。

だって、もうそれしかないんです。捨てるものなんかないんです。落ちこぼれた人間が人生を取り戻すための一縷の望みを、この就活にかけるしかありませんでしたから。

 

2次面接を受けた夜、採用担当の女性から電話がありました。「あなたに是非働いてほしいと思っているのだけど、やはり一つだけ心配なことがあるの。ご家族のトラウマなどは克服できているのかしら。本当に働き続けることができるかしら?」

「はい、もう克服しましたので大丈夫です。ぜひ採用していただきたいです。よろしくお願いします」

 

そして翌日、あらためて正式内定との電話連絡がありました。

 

4.の大手事務所Bについては、書類審査に通過して一次面接を待っていた段階でしたが、3.の事務所の社風が気に入ったのと、最後に電話をくださった採用担当の女性の声に深い慈しみを感じたのがとても印象に残り、4.を受ける必要性は感じませんでした。「私はここで働くんだ」と、もう決意していました。

 これで人生が開ける。これで人生を取り戻せる。本当に心からそう思いました。

 

世間の就活ノウハウに乗せられるな

この記事を書く前に、試しに「ピンポイント 就活」で検索してみたところ、こんな記事が出てきました。

中川特殊鋼株式会社 の人事ブログ:ピンポイントは危ない!!| 【就活ならリクナビ2015】新卒・既卒の就職活動・採用情報サイト

こちらの人事担当の方は、以下のように書いています。

当社にお越しになる学生の皆さんとお会いして話していると、 最近の学生は実社会を知らない。 そして大学と言う一般社会から隔離された「楽園」で過ごしてきてしまっている。

(中略)

そして、辛いでしょうがたくさんの企業の選考に落ちて下さい。 辛い思い、悲しい思い、いやな思い、矛盾、やり切れなさをたくさん味わってください。 実社会は不条理なのです。矛盾がたくさんあるのです。それを身を持って経験して下さい。

これが、一般的には「正しい」就活観、というものなのでしょう。 

大学にそこそこ真面目に通い、サークルもバイトも恋愛もゼミも楽しくてリア充真っ盛り!!な稀有な学生は、このように無駄に沢山受けて無意味に鞭打たれてマゾヒスティックな愉悦を楽しむのも一興でしょう。優秀な学生なら内定がバンバン取れて、就活生ヒエラルキーにおける自分の優位性を再確認する悦びも味わえるでしょう。

でも、幼い頃からスクールカーストで神経をすり減らし、FBやTwitterやLINEといった「オンライン実社会」で自分の立ち位置をイヤというほど認識している多くの疲れた就活生たちが、これ以上何に傷つく必要があるのでしょうか?

 

16年前の私はすでにボロボロでした。もう無駄に傷つきたくありませんでした。ただ、新しい環境で、希望を持って働き、自分で稼ぎ、楽しく日々を送りたかったのです。気持ちよく働けそうな職場がひとつ見つかれば、もうそれで十分でした。

無駄な努力で無駄に傷つかないよう、自分を見極め、相手を見極め、出来るだけ効率のよい就活をしましょう。皆がそうしているからといって、とりあえず何十社もエントリーする必要はありません。隣のエリート就活生と同じ超人気企業にいくつも申し込んだところで、落ちこぼれのあなたが受かるわけはないでしょう。

就職するのは、あなたが働きたいと思えて、あなたでいいと言ってくれる1社だけです。よき出会いがありますように!