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ガマンせずにワーキングマザーと働く方法

先日載せた以下の記事については、北条かやさんがリツイートして下さったこともあり(ありがとうございました!)、多くの反響をいただきました。

独身女子にワーキングマザーの実態が見えにくいのはなぜか。 - 街場のワーキングマザー日記

 その中で、ひとつ気になる呟きがありました。ある20代女性(以下「A子さん」)が、ワーママとの仕事のやり方に悩んでいるというのです。

定時で帰ってもらってそこから引き継ぐ。そしたら私はいつまでたっても定時で帰れない

う~ん、これは、時短・定時退社するワーキングマザーのワークシェアの方法として、一番まずいパターンだと思います。一人だけにしわ寄せが集中し、しかも、必ず定時以後で残業必須になっているからです。

 

ワーママが時間内に終えられない仕事を分担するにあたっては、当事者が3者います。すなわち、①ワーママ本人、②ワーママのかわりに仕事を請け負う人(ヘルパー)、③ワーママとヘルパー双方を監督する上司またはコーディネーターです。

私はこのうちの3者すべてを経験しました。職場によって仕事内容も規模も様々なので一概には言えませんが、自分の経験と照らし合わせながら、上記のお悩みの改善方法を実践編コミュニケーション編に分けて考えてみたいと思います。

 

ワーママと働く方法 実践編①~ワーママの業務を特化する~

仕事には、大きく分けて2タイプあります。

タイプA:上司やクライアントの指示により、ある時間までに急いで仕上げるべきもの

タイプB:時間に余裕があり、仕上げのタイミングをある程度自分でコントロールできるもの

勤務時間に限りがあるワーママには、タイプAは基本的に不向きです。そこで、自分で時間配分をコントロールできるタイプBの仕事に特化して、集中的に担当してもらう、という方法があります。

 

30代前半の頃、私はある部門の秘書のリーダー役でした。その部門には秘書が10名ほどいて、各秘書が2~3名の国家資格保有者(以下「先生」)を担当。そのうちの半分ほどが私より年上の30代半ば~アラフォーで、チームにはいつも誰かしらワーママがいました。

秘書の仕事というのはタイムリミットのあるタイプAの仕事が多いのですが、 タイプBの仕事も沢山あります。その中でも厄介で負担が大きいのが、定期的に発行する請求書の作成でした。定期請求といっても、顧客や案件によって発行するタイミングも金額もまちまちですし、実際に仕事をする先生がその時々で変わったりもするので、互いに誰かがやるだろうと思い込んで誰も請求書を作成していなかった、などというミスが度々起きていました。

そこで、ちょうど育休から復帰する予定のあった経験豊富なワーママに、この請求書の定期発行を一括して担当してもらうことにしたのです。

手際がよくて賢い彼女は、大量の請求書発行をきっちりタイミングよく捌くだけでなく、顧客毎に異なる請求の取り決めや明細フォームを整理・一覧化して、部門全体に周知してくれました。そのおかげで、その他の秘書が単発の請求書を発行する際も、彼女が作ってくれた資料を参照することで、よりスムースに請求作業が進むようになりました。

また、彼女にとっても、自分で作業のタイミングをコントロールし、早め早めに準備しておけば、保育園からの急な呼び出しがあっても誰にも迷惑をかけずに退社することができたので、精神的負担も軽くて済んだものと思います。

以上のように、ワーママの担当業務を時間に左右されないものに特化するというのが、解決方法その①です。

 

ワーママと働く方法 実践編②~ワーママの業務を分散する~

①のように業務を特化することが不可能な場合は、可能な限り分散させましょう。実際には、このパターンの方が多いのではないかと思います。

私が育休から復帰したときは①の方法は許されていませんでした。リーマンショック後で人員整理が進んだため、誰も担当していない秘書を雇っておく余裕はなくなっていたからです。

職場復帰直後から3名の先生を担当していましたが、30分の時短を取っていました。そこで、最後の30分については、先生一人につき、それぞれ異なる秘書に引継ぎをすることに決まっていました。その日の仕事を引継ぐ必要があることが予めわかっている場合、引継ぐ相手が自分の仕事との調整をつけ易いように、なるべく早めに担当の秘書に連絡するようにしていました。

ちょっとした仕事ならこれで間に合うのですが、更に長時間の作業を要する仕事がある場合、夜勤シフトの秘書さんに予約を入れてお願いしていました。ただし、夜勤の秘書さんは一人しかいなかったので、既に先約が入っていることも多くありました。その場合は、部門の秘書リーダーに相談し、必要があれば、リーダーが部門の秘書全員にメールを流して手伝える人を募り、やれる人にやってもらう、という人海戦術になっていました。

 以上のように、ワーママの担当業務を徹底的に分散させるというのが解決方法その②です。

 

「そんな方法は、秘書のようなアシスト業務だから出来る」と思われるかもしれませんが、私の職場では、通常はクライアントに対応して毎日深夜残業している先生たちの間でも、育休明けのワーママ先生の仕事は同じように特化または分散されていました。

ポイントは、まず業務内容を細かく箇条書きにして洗い出すことです。そして、「この仕事は、1人がA~Zまで一体化した流れの中で完成させるべきものだから、各業務を切り取って複数の人間に分担させることはできない。せめて、その仕事を担当するワーママが帰宅した後は、常に特定のひとりに引き継がせるしかない」という強い思い込みを捨てましょう。これは、どんな仕事にも言えることではないかと思います。

確かに、A~Zを1人がやれば8時間で終わるのに、それを3人で分けるのは一見効率が悪く見えるかもしれません。3人でやるためには、互いに作業工程を確認し合い、引継ぎをする必要があるので、各人が3時間ずつかければ、トータルで9時間を要してしまいます。

そうかと言って、「ひとりで8時間で仕事を終わらせられないような人間は働かなくていい」という暴論は今では通用しません。一昔前の職場は、妻に家事や育児や親の介護という重い負担をすべて背負わせ、自分はただ仕事だけすればいい男性、すなわち強者だけが支配する場でしたが、今では、子育てしたり、親の介護をしたり、場合によっては自らの病と闘いつつ働く、弱者をも包摂した場へと変わりつつあります。いつ弱者になるか知れない者同士が負担を分かち合い、誰か一人にすべてのしわ寄せが集中する事態を少しでも軽減するために、業務内容を細かく分析してみましょう。工夫次第で、何かしらの特化または分散方法が見つかると思います。

 

ワーママと働く方法 コミュニケーション編

ここまでで、ワーママと働く実践方法はわかりました。しかし、それを実現するためには、当事者たちが、まず話し合わなければいけません。

 

最初に書いたとおり、当事者は3者います。

①ワーママ本人

②ワーママのかわりに仕事を請け負う人(ヘルパー)

③ワーママとヘルパー双方を監督する、上司またはコーディネーター

この中でも一番重要なのは、③の上司、つまり、組織の側により近い人 の役割です。

ワーママにどのような仕事を割り振り、その補佐を誰に任せるかを決めるのは、上司の仕事です。ワーママもヘルパーも一方的な負担を感じることなく、チーム全体の仕事をより円滑に進めるためには、上司自身が積極的に、ワーママやヘルパーと十分なコミュニケーションを取るべきです。

私自身が③の立場にいた時、私はまずワーママ本人の希望(勤務可能な時間、やりたい&できる仕事etc.)を聞き取り、彼女に何をしてもらえるかを考えました。もちろん、自分ひとりで考えるだけでなく、秘書全体を監督する私の上司や、ヘルパーになってもらう秘書たちとも、十分に話し合いをしました。私が①のワーママ本人であったときも、人事や上司は私に十分なヒアリングをしてくれました。

 

しかし、上司がそのような人ではない場合、ワーママやヘルパーはどうしたらいいのでしょうか。

例として挙げたA子さんのケースも、上司の方の働きが不十分ではないかとお察しします。詳細を存じ上げないので推測するしかありませんが、上司の方は、下っ端の彼女にすべてを任せれば、本人にとっても修行になるし問題ないだろうと思い込んでいるのかもしれません。そもそも、人手が少ないので、20代女性ひとりに押し付けるしかない、という切実な事情もあるのかもしれません。

それでも、「定時で帰ってもらってそこから引き継ぐ。そしたら私はいつまでたっても定時で帰れない」とA子さんが思わず呟かざるを得ない背景には、上司の方が、A子さんと十分に話し合っていないことが読み取れます。

本当にあらゆる可能性を検討し、ワーママ当人やA子さんと意思疎通を図っていたら、定時までに終わらないような業務量をワーママに課し、A子さんに毎日その仕事を引継がせて残業させるような事態にはならないでしょう。ワーママのそもそもの業務分担を減らすなり、A子さんだけでなく、ワーママより目上の人も含めた複数人で残業を当番制にするなり、何かしらのもう少しマシな手段を見つけられるはずです。

 

とはいえ、ここでA子さんの上司に難癖をつけても何も解決しませんね。上司がいたらない人であるなら、A子さん自身が思い切って上司に相談するしかありません。

もしかしたら、A子さんは、上司にヘルパー役を指示されたときに、何も言わずに「ハイ、やります」と答えたのかもしれません。というか、おそらくそうですよね。上司の命令ですし。

ところが実際にやってみると、思っていたよりも負担が重いことに気付いたのでしょう。A子さん自身が、いま、現実に不満を抱えているのだから、そのことを上司に改めて相談するのは何の問題もありません。

仮に、上司が「おまえ、やるって言っただろう!」などと一喝して終わりにするような人なら、そのような人が上司であることが問題だと思います。

どんなに事前に想定をしていても、100%想定どおりには行かないのが普通です。ですから上司は、どれだけ最善を尽くして方針を決め、部下に指示を出したのだとしても、継続的にヒアリングを重ね、現実に即して柔軟に方針を変えていくことが求められます。もし、上司に直接訴える勇気がどうしてもないのであれば、上司に近い立場の人に相談してもいいでしょう。

 やってはいけないのは、ヘルパーもワーママも、「自分が耐えればいいんだから」と黙って我慢し続けることです。こうした不要な忍耐は、最終的に、相手への敵意さえ芽生えさせます。同僚同士が個人的に敵意を向け合うことは、チーム全体の雰囲気を損ね、仕事効率に確実に影響を及ぼします。

 

それでは、3者がそれぞれやるべきことを、以下にまとめてみます。

①ワーママ:仕事を抱え過ぎていたり、ヘルパー役に対して不満を抱いているワーママは、きちんと上司に相談しましょう。家事・育児との両立にまだ慣れていない段階では視野狭窄に陥りやすく、なかなか周りが見えなかったり、被害妄想を抱きがちになったりもします。自分で抱え込まずに早め早めに相談すること。また、日頃お世話になっているヘルパーの人たちに積極的に話しかけ、感謝の気持ちを伝えることも大切です。

②ヘルパー:耐え続けているヘルパー役は、問題点をまとめ、可能であればいくつかの改善案も用意して、上司や周囲の誰かに相談しましょう。自分で動かないままストレスを溜めこんだり、ワーママや上司に敵意を抱いたままでいることは、何の解決策にもなりません。

③上司:もちろん、上司はこれらの相談に真摯に対応し、先に書いたような改善策を十分に検討しましょう。全員の願いを100%叶えることはできないので、ある程度のことは我慢してもらう必要もありますが、その場合には、きちんと理由を説明して納得してもらい、チームのために協力してくれていることに感謝の気持ちを伝えましょう。

 

より働きやすい職場環境をつくるために

仕事を割り振るのは上司の仕事ですが、チーム全体で効率よく、気持ちよく働ける環境をつくるのは、ひとりひとりの責任です。黙って耐えたり、陰口を叩くのではなく、当事者各自が気持ちのよい労働環境をつくる主体的なプレイヤーとして、何らかの働きかけをしましょう。

現実には、全員が100%満足のいく仕事環境というのはあり得ません。それでも、自ら働きかけることで少しでも状況を改善できれば、ストレスは減るものです。

自分の置かれた環境は自分で改善する。その自覚をもって行動するのが、大人としての責任だと思います。