専業vs兼業vs独女―20代女子よ、オバチャンたちの「べき論」に惑わされるな

10年後の自分を想像してみよう

これから就活をしたり、まだ社会人歴の浅い20代女子の皆さんは、10年後の自分が何をしていると思いますか?

女の人生は多様です。専業ママになるべきか、兼業ママになるべきか、独身を貫くべきかetc. ― 世の中には、女の生き方に関する様々な「べき論」が溢れ、それらが時に激しい対立や憎悪さえ引き起こします。

20代前半あたりの皆さんは、それらの熱い論争をクールに眺めているかと思いますが、三十路も近づいてくると、そろそろ他人事ではなくなってくるでしょう。では、このような「女は〇〇すべき」という先輩女性たちの熱い舌戦に、どのように向き合えばいいのでしょうか。

 

 女の「べき論」まとめ

最近は、曽野綾子氏が「週刊現代」8月31日号に寄稿した「何でも会社のせいにする甘ったれた女子社員たちへ」産経新聞における長谷川三千子氏の「年頭にあたり「あたり前」を以て人口減を制す」のように、専業派の意見が物議を醸していますね。

いずれも、厳密には“子供が小さいうちは”働くなという限定つきではありますが(お二人とも元祖キャリアウーマンですしね…)、時代の流れに逆行する意見として批判を浴びた一方で、「よく言った!」と密かに快哉を叫んだ方も多かったことでしょう。

 

時代の趨勢として勢いがあるのは、やはり兼業派でしょうか。もっとも影響力のある「兼業派」として私が思い浮かべるのは、漫画家の西原理恵子さんです。彼女の主張はこちらの記事によく表れています。

 

そして、独女派の代表選手といえば、やはり上野千鶴子氏ですね。2012年5月26日の 朝日新聞beに掲載された人生相談コーナー「悩みのるつぼ」における回答は、積極独女派の立場を明確かつ端的に表明しています。

わたしは結婚をこう定義しています。「たった1人の異性に排他的かつ独占的に自分の身体を性的に使用する権利を生涯にわたって譲渡すること」  この契約、守れますか? 既婚者のなかには、契約違反を平気でしている人たちもいますし、最初から守れないものとタカをくくって契約を結んでいるひとも多いようです。あなたはこれが許せないのですね? まったく同感です。少なくともわたしは、こういう契約はおそろしくて結べません。約束しても守れそうもないので、いちども約束しないできました。なんてバカ正直なんでしょうね(笑)。

 

「べき論」の舞台裏

著名な女性がこのように女の生き方に対する自分の立場を明確にすると、必ず強い感情的反発を招き、ネット上で激しい議論が沸き起こります。ちょっとググればわかりますが、西原さんに対する批判などは特に激しく、「炎上」ではなく、「怨情」と変換したいくらいです(-_-;)

ところが、実際には、大半の専業主婦もワーママも独身女性も、このように強い主張をもってそうなったというよりは、様々な要因が絡み合ってそうなったに過ぎないのです。当の論者たちも、結局は同じではないでしょうか。

 

曽野氏や長谷川氏が「子供を産んだら家庭に入れ」と言えるのは、彼女たちが、たとえ専業主婦になっても仕事に復帰できるだけの家柄・学歴・実力をお持ちだったからです。

西原さんが共働きを主張するのは、彼女が経済的に不安定なご家庭で育ち、ご主人も同じリスクを抱えていたからです。

上野氏が独女を選んだのも、それが可能な立場にあったからでしょう。また、「この人となら一生一緒にいてもいい」というお相手がいたら、話は変わったかもしれません。

 彼女たちの信念は、それぞれの、それまでの人生に基づいているのです。

 

曽野氏や長谷川氏がいくら「子供を産んだら家庭に入れ」と叫んだところで、多くのワーママは意地でも仕事を辞めないでしょう。それでは生活が立ち行かないし、いちど正社員の座を手放したら、数年後に同じ立場に戻れる可能性はほぼないと言っていいからです。

他方では、北条かやさんも新しい生き方を目指す『ハウスワイフ2・0』の目新しくなさ - コスプレで女やってますけどで指摘されていますが、日本では、高学歴女性が専業主婦になることは珍しくありませんし、今後もその傾向はさして変わらないでしょう。西原さんが自分で稼がないことのリスクをいくら主張しても、彼女たちの多くは親も配偶者も高収入であり、経済的リスクに現実味は感じられないからです。

 

詰まるところ、女の生き方は「べき論」で語られる筋合いのことではありません。それは、社会の影響を受けつつも、生育環境、出会った相手、学歴、職業、本人の性格、向き不向きなど、様々なファクターが複雑に絡み合った、極めて個人的な選択です。

 

ハッピーな10年後のために

あらゆる側面において100%の好条件に恵まれた人など滅多にいないので、個々の選択には、「そうせざるを得ない」事情が多々あります。20代女性の皆さんも、どこかの時点で、自分ではどうにもならない現実を思い知り、大なり小なり挫折を味わった経験があるでしょう。

でも、そうした負の側面を受け入れたうえで、自分がどう生きたいか。自分にとって、どうしても譲れないことは何か。そうしたことを地道に、時間をかけて考え続けるしかありません。

 

私自身の個人的な経験はいずれ書くつもりですが、つねに大切にしてきたのは、自分の人生を他人(家族・恋人・社会を含む)のせいにしたくないという思いです。「私が〇〇なのは××のせいだ」と他人のせいにし続けているかぎり、幸せにはなれません。

仮にそのような現実があったとしても、それなら、その悪条件を好転させるにはどうしたらよいか。自分の行動を変えればいいのか、考え方を変えればいいのか、人との付き合い方を変えればいいのか。人や環境を妬んだり恨んだりする時間があったら、そちらの方向に智恵を絞った方がよほど建設的です。

そうして考え抜き、行動したのであれば、専業主婦になろうが、ワーママになろうが、独身を貫こうが、何だっていいのです。オバチャンたちの「べき論」の数々は参考程度に拝聴しておき、あとは、自分で、決めてください。